直木賞 「蜜蜂と遠雷」を読んだ。
蜜蜂と遠雷を読了!
まず惹かれたのは装丁。
蜜蜂も遠雷も描かれていないのに、なぜかこの絵をみるだけで蜜蜂も、そして遠くでなる雷も想像できる。そんな装丁に思わず頬ずりしてしまいました。
そして、このイラストを描かれた杉山巧さん。調べてみました。
杉山さんどのイラストも素敵です。一気にファンになりました。
どんな人にオススメの小説か?
全ての人に!!と言いたいところですが、しいて言うならば一度でもピアノを習ったことのある人、または、ピアノの音色が好きな人はぜひ読んでほしいです。
書店で購入するとき正直本の分厚さに「うわっ!読めるかな。。。」と不安に思いました。でも、ピアノのコンクールが舞台になっているということで、私には身近な題材なので、(音楽教室を主宰しています。)文章が頭の中で映像になり、驚くほど早く読み進めることができました。(読了期間は2日間でした。)
読んでいると、頭の中で音楽が鳴り響くのです。
バッハ、モーツァルト、リスト、ラフマニノフ、ショパンetc・・・
ちなみに今このページでは、小説の中の曲がきけるようになっています。
読んでいる途中で、何度も何度も鼻の奥が熱くなり、あるところでは声を出して泣きました。淡々とコンクールが行われる様子が書かれているだけで、それほど大きなエピソードがあるわけではありません。それなのに、自分の感情にそっと寄り添ってもらえるようなそんな言い回しに、心がほっとするのです。
文中の大好きな部分を引用します。
「彼の演奏を聴くと、良かれ悪しかれ、感情的にならずにはいられない。彼の音は、聴く者の意識下にある、普段は押し殺している感情の、どこか生々しい部分に触れてくるのだ。
しばらく忘れていた、心の奥の柔らかい部分。
それは、誰もが持っている、胸の奥の小部屋だ。」
この「彼の演奏を聞くと」というところを、この「著書を読むと」と置き換えてほしいのです。この本は、昔私たちがもっとたくさん持っていた感受性をもう一度表へと導いていくれる。そんな感覚に陥ります。
オーケストラの音楽を聞いた後、目を閉じると鮮明にその音が再現された子供の頃。
音には色があると、音楽を聴くと感じていた憧憬。
言葉にできない、たくさんの思いを胸に秘め、社会でうまく立ち回るために私たちは多くの感受性に蓋をして大人になってしまった。
でも、もっとあの頃のように、自分の持つ感受性を表に出してもいいのではないか。
人に「変な人」と白い目で見られることをおそれず、もっとのびやかに感じるものを感じ、それを表に表現すればいい。
そんなことを、何度も何度もくりかえし、私たちに問いかけてくる。
この本からそんなメッセージが届きました。
思いを文章に乗せることは、とても難しい。
けれど、この本にはその人が言葉にできずとも感じている感覚を、すべて「言葉」に表現し、その感覚を奮い起こさせる。
文中にたくさん線を引きたくなる、その美しい表現に、読む人は音楽を感じるでしょう。
音楽を愛するすべての人にこの「蜜蜂と遠雷」をお勧めします。
蜜蜂と遠雷 [ 恩田陸 ]
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